マルクスの徒然草

お主。今日もお疲れ様であった。少しひと休みしていかぬか。

寒さが連れてくるあの思い出

 

「ッスゥーーー・・・」

 

寒いとつい口で言ってしまうこれ、なんなのだろう。

 

丸めた手のひらに息を吐きかけ温めた。

 

午前7時。我は支度をはじめる。

 

我の朝の流れは

朝食→洗い物→歯磨き→頭髪セット

という流れで進む。

 

日によってはトイレもどこかに挟む。

 

「ご飯が最初なんだね」と友に言われたが、我は育ってきた過程でこの流れが染みついている。

 

友にはご飯が最後の奴もいたが、いや歯磨きのあとにご飯て、意味なくね。と。

 

 

 

お早う皆の者。我マルクスと申す。

 

冬の朝はどうしてこう、つらいのか。

 

さきほど述べた朝の流れで特にツラいのが、頭髪セット。その中でも寝ぐせを直すところ。

 

我の寝起きの頭髪は丸めた紙くず。否、トッピングが多すぎるスターバックスの新作フラペチーノといったところか。要は、散らかっている。

 

洗面台に頭をかがめて、頭に湯をぶっかける。寝ぐせ直しウォーターを使っていたときもあったがこちらの方が手っとり早いのだ。

 

この際、蛇口を赤の方にひねって出る水が湯に変わるのを待つ。(ツラいポイント1

 

頭に数十秒シャワーで湯をかける。

 

タオルで頭を拭く。この際首筋に冷たい水滴が垂れ、ヒャッとなる。(ツラいポイント2

 

整髪剤でそれなりに髪型を作り上げスプレーで固めて、家を出る。

 

風が吹いただけで髪型崩壊。(ツラいポイント3

 

こんな感じだ。

 

セット崩れない人なんなの。セットした状態を「名前を付けて保存」してるの?

 

 

 

あれはそう、ちょうど今のように寒い頃。

 

10代の当時、寄り添っていた女子の家に行く日のことだ。彼女は1歳年上であった。

 

女子が「あまりツンツンヘアは嫌」というので前髪をあえておろし、トップのボリュームも抑え目に、いわゆるふんわりセットでキめて我は自転車にまたがった。

 

自転車にカギをかけ玄関へ。この先我を待つ時間に高鳴る鼓動。

 

玄関で我を見た女子が一言「・・・おぉ。」

 

バッチリな我を見てトキめいておるのか。苦しゅうない、苦しゅうないぞ。なんせセットに30分は費やしたからな。

 

道中の寒さでもよおしてしまったので、お手洗いを借りる旨を伝えた。

 

廊下を歩いていると壁に掛け鏡が。

 

前に立って我は言葉を失った。

 

 

―――何コレ、落ち武者?

 

 

自転車で正面から風を受けつづけた我の髪は、センターに分け目をつくって左右斜め上へと逆立っていた。

 

玄関で彼女が放った「・・・おぉ」が脳内でリピート再生される。

 

 

 

―――え、ヤバくない?男が来てくれたと思って玄関開けたら落ち武者が立ってるんだもん。なぜかドヤ顔で立ってるんだもん。

 

 

 

 

一縷の希望を抱いて修正を試みるも、なかなか家を出たときのようには戻らない。

 

落ち武者感100%から65%くらいまで修正して彼女の部屋へと向かう。

 

我「おはよ」

 

女子「やっほ!おはよ」

 

落ち武者感65%の落ち武者にもなれきれてない落ち武者。落ちた落ち武者、落ち落ち武者の登場である。いやもう普通にキモい奴の登場である。

 

そんな落ち落ち武者の挨拶にも明朗に返してくれたのがせめてもの幸いだった。

  

っふ、懐かしき日々よの。

 

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今の我はもうそこまで髪型を作りこむ歳でもないが当時の我は若かったな。女子から良く見られたくて必死であった。

 

だが男ならそういう頃は少なからず皆通っておるじゃろう。そこのお主よ、のぅ?

 

ふと、寒さで昔のことがフラッシュバックしてな。

  

ではな。

 

 

 

そなた達とともに

         マルクス